こんにちは、伏見IVF乳腺うえだクリニック、院長の上田匡です。
今回は、不妊治療のスクリーニング検査においてかなり重要といえる、子宮卵管造影検査(Hysterosalpingography;HSG)の内容・他の検査方法・料金などについて解説します。
目次|このコラムでは、以下の内容について解説します。
-
目次
- 1.子宮卵管造影検査(HSG)とは
- 2.卵管疎通性を評価できる他の検査
- 3.HSG前に行う検査
- 4.水溶性造影剤と油性造影剤どちらがよいか
- 5.読影について
- 6.検査に伴う痛みなどの合併症について
- 7.具体的な料金(保険)について
- 8.まとめ
1.子宮卵管造影検査(HSG)とは
HSGとは、子宮の形や卵管がきちんと通っているかを確認する検査です。
卵子と精子が出会うためには、卵管が通っていることが重要です。そのため、不妊治療を始める際には、卵管が詰まっていないかを確認することが大切です。
妊娠において卵管は重要な役割を担っており(『妊娠のしくみ』、『不妊症と原因について』参照)、卵管性不妊は不妊症の原因の30~40%とされています。卵管疎通性(卵管が詰まっていないかどうか)を評価する方法は大きく4つありますが、簡便さ・評価の客観性・侵襲性の低さなどからHSGが第一選択となっています(1)。また、HSGは卵管疎通性だけでなく、子宮内腔の形態異常(子宮奇形・子宮内膜の癒着・子宮内膜ポリープ・粘膜下筋腫)や卵管采周囲(卵管の出口付近)の癒着についても評価が可能です。
次に、検査手技の説明です。簡単に説明すると、子宮内に造影剤を注入し、レントゲンの機械で造影剤の流れをリアルタイムで撮影します。具体的には、下記に、HSGのシェーマと実際の画像を提示しながら解説します(図1)。

① 図1a.のように子宮内腔にカテーテルを留置し、造影剤が子宮頸管(子宮の入り口)から漏れてこないようにバルーン(風船)を拡張させます。この際に月経痛のような痛みがあると言われます。
② 注射器で造影剤を子宮内腔にゆっくり注入しながら、透視装置(連続してX線を出す装置)でリアルタイムに子宮と卵管の状態を評価し、図1b.のように何枚か記録用の撮影を行います。最も痛いといわれるのがこの操作で、子宮内腔を造影剤で膨らませることで痛みが生じます。特に卵管閉塞(つまっている)の患者様では痛みが強くなる傾向があります。
③ 卵管から外に出た造影剤の広がり(卵管周囲の癒着)を評価するため、時間をおいてさらにもう一枚撮影を行います。
HSGは外来で行うことができ、このように分かりやすい画像で患者様にも納得してもらいやすい良いスクリーニング検査と言えます。
2.卵管疎通性を評価できる他の検査
卵管疎通性を評価する手技としては、HSGのほかに
・超音波ガイド下卵管通水検査
・子宮鏡下選択的卵管通水検査
などがあります(表1)(2)。腹腔鏡下色素通水検査もありますが、これは異所性妊娠や子宮内膜症の手術をおこなった際に、ついでに卵管疎通性を評価する手段であり、入院および全身麻酔を要するためスクリーニング検査とは別物として扱います。

・超音波ガイド下卵管通水検査
HSGと同様に外来で行える保険適応のある検査です。ですがHSGより画像の客観性に乏しく、卵管の閉塞部位なども評価が難しいといった点があります。このコラムを記載している時点で日本においては、卵管疎通性を評価する第一選択の検査とは言えません。
・子宮鏡下選択的卵管通水検査
子宮腔内や卵管からの逆流を子宮鏡で観察できるため、子宮腔内の評価と閉塞の有無の評価に優れています。一方で、最大の問題点は保険適応がないことにあります。保険で不妊治療が行える現代ではなかなかハードルの高い検査といえます。
3.HSG前に行う検査
まず、HSGは一般的に月経の7~12日目に行うことが多いです。これは、出血がおさまってから排卵をする前までの期間を想定しており、妊娠後の被ばくを避けることを目的としています。このため、月経周期が長い患者様は排卵までの間隔が長くなるため、上記の期間以外にも行うことが可能です。
HSG前必須検査としては、当院では
・クラミジアに対する検査
・甲状腺に対する検査(TSH)
を行っています。
クラミジア感染の有無を確認することは、HSGを安全に行ううえで重要です。クラミジアに感染している場合、HSGにより腹腔内にクラミジアが散布され骨盤腹膜炎を起こすことがあるからです(3)。1年以内にクラミジア検査を行っていない方は、必ず検査(クラミジア・トラコマチスPCR分泌物、ないし、クラミジア・トラコマティスIgG+IgA)をHSG前に受けてください。また、過去に検査を受けた方も、念のため検査時期などについて医師にご相談ください。
また、HSGではヨード系造影剤を使用しますが、禁忌としてヨード過敏症の既往および重篤な甲状腺疾患があります。重篤な甲状腺疾患を除外する目的や、甲状腺機能の状態を確認するために、TSHを検査しています。
4.水溶性造影剤と油性造影剤どちらがよいか
HSGでは、検査後に妊娠率が向上すると言われています。また、油性造影剤の方が水溶性造影剤に比べて妊娠率が高いことが知られており、当院では油性造影剤を使用しています。
近年、N Engl J Medで油性造影剤は水溶性造影剤に比べて継続妊娠率(39.7% vs 29.1%)および生児獲得率(38.8% vs 28.1%)が高かったといった報告されています(4)。また、様々な報告をまとめたメタアナライシスにおいても、油性造影剤において臨床的妊娠率が高かったことが報告されています(5)。これらの結果をもとに、欧州生殖医学会(ESHRE;European Society of Human Reproduction and Embryology)のガイドラインでは、原因不明の不妊症において油性造影剤についての説明することが提言されています。
一方で、油性造影剤には肉芽腫の形成や脂肪塞栓の報告があります(6)。また、油性造影剤には、まれに甲状腺機能に影響することがあり、検査後に一時的な甲状腺機能の変化を認めることがあります(7, 8)。
5.読影について
HSGの評価は、①子宮内腔の形態、②卵管の疎通性、③腹腔内に残った造影剤の拡散、の3点を評価します。

①子宮内腔の形態は、図2d.が正常なのでまずはご確認ください。それに比べて、図2a.では子宮底部にくぼみがあり弓状子宮を疑う所見です。図2b.では通常左右対称に広がる形が一側に細長く子宮内腔が伸びており単角子宮を疑う所見となります。ただし、HSG所見だけでは副角(小さな子宮)の有無が不明であり、こういった子宮奇形に対しては超音波検査やMRIなど他のモダリティを併用して総合的に判断する必要があります。
また、図2c.では子宮内腔の造影欠損像を認め、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫を疑う所見を認めます。こういった場合も、超音波検査や子宮鏡検査を併用して正確に診断・治療を行う必要があります。
②卵管疎通性について評価します。図2d.では、左側の卵管が造影され腹腔内に造影剤がしっかりと流出しているにも関わらず、右の卵管が描出されていません。左は卵管疎通性あり、右は卵管閉塞と診断します。
③造影剤の拡散については、腹腔内に流出した造影剤が散らばっているかを後の撮影で評価します。
6.検査に伴う痛みなどの合併症について
HSGの合併症としては一般的に、疼痛・出血・感染・アレルギー反応が知られています。
今回は、特に質問の多い、検査による痛みについて説明します。
痛みは冒頭にも記載しましたが、バルーンを拡張させる際や造影剤を注入する際に生じますが、多くの場合は我慢ができる範囲の痛みと言われています。ただし、卵管が閉塞している場合などに、圧を加えて造影剤を注入すると痛みが強くなります。
ここで重要なポイントは、あえて圧を加えて造影剤を注入することで、卵管閉塞が解除される場合があります。卵管閉塞を認めた場合、徐々に圧を強くするのですが、その際は痛みを伴うことが多いです。また、強すぎる圧で油性造影剤を押すと、先にも説明しましたが油性造影剤が血管内(脈管内)に流入し脂肪塞栓が生じます。ですので、ここがHSGを行ううえでの重要なポイントで、患者様の痛みの程度、卵管の閉塞状況、造影剤の血管内への流入の有無などを確認しながら、無理のない範囲で慎重に造影剤を注入する必要があります。
また、痛みが強すぎた場合は迷走神経反射が生じ、血圧低下による気分不良、冷感、嘔気・嘔吐などが生じる場合があります。こうなっては検査が継続不能となるため、この検査を行う医師は、患者様にお声かけし、痛みが強い場合は注入を止めたり、事前に鎮痛薬の内服をすすめたり、不安が強い方には麻酔下にHSGを行うなど対策を講じます。
7.具体的な料金(保険)について
※2026年9月時点。当院でHSGを受けた場合の保険診療3割負担の一例です。
初再診料 136点+投薬 85点+画像診断料 3,214点=合計 3,437点
保険分負担金額 10,310円(3割負担)
これに加えて、排卵誘発薬などの処方があればその分追加になります。
8.まとめ
今回は、
HSGってそもそも何をみているの?
どんなメリットがあるの?
どうして痛いの?
痛みを抑えるにはどうしたらよいの?
など、患者様が日ごろ感じているであろう疑問に答える形で解説しました。
HSGだけでもこれだけ話す内容があり、不妊症のスクリーニング検査は多岐に渡るため情報量は膨大になります。恐らく治療を受けている皆さまは、日ごろ疑問だらけかと思います。
当院では、患者様に納得していただいたうえで治療を受けていただくことを基本的な理念としております。疑問が生じた場合は、何なりとご相談ください。そういった内容をまたコラムに書いて、皆さまが不安なく治療を受けて頂くよう努めます。
このコラムが、皆さまの不妊治療に関する疑問を解決する一助になれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
伏見IVF乳腺うえだクリニック 院長 上田匡
参考文献
1. 一般社団法人日本生殖医学会編. (1)子宮卵管造影検査. 生殖医療の必修知識2023. 2023:89-93.
2. 玄太郎 泉. CQ7 きれいな子宮卵管造影のコツは?結果をどう評価する?. 産婦人科の実際. 2025;74(12):1190-5.
3. Moller BR, Allen J, Toft B, Hansen KB, Taylor-Robinson D. Pelvic inflammatory disease after hysterosalpingography associated with Chlamydia trachomatis and Mycoplasma hominis. Br J Obstet Gynaecol. 1984;91(12):1181-7.
4. Dreyer K, van Rijswijk J, Mijatovic V, Goddijn M, Verhoeve HR, van Rooij IAJ, et al. Oil-Based or Water-Based Contrast for Hysterosalpingography in Infertile Women. N Engl J Med. 2017;376(21):2043-52.
5. Wang R, Watson A, Johnson N, Cheung K, Fitzgerald C, Mol BWJ, et al. Tubal flushing for subfertility. Cochrane Database Syst Rev. 2020;10(10):CD003718.
6. Ueda M, Koshiyama M, Sato Y. Prophylactic corticosteroids in pulmonary oil embolism after hysterosalpingography. J Obstet Gynaecol. 2016;36(1):137-8.
7. Mathews DM, Peart JM, Sim RG, Johnson NP, O'Sullivan S, Derraik JGB, et al. The SELFI Study: Iodine Excess and Thyroid Dysfunction in Women Undergoing Oil-Soluble Contrast Hysterosalpingography. J Clin Endocrinol Metab. 2022;107(12):3252-60.
8. So S, Yamaguchi W, Tajima H, Nakayama T, Tamura N, Kanayama N, et al. The effect of oil and water-soluble contrast medium in hysterosalpingography on thyroid function. Gynecol Endocrinol. 2017;33(9):682-5.