こんにちは、伏見IVF乳腺うえだクリニック、院長の上田匡です。
今回は、21-OHD(21-水酸化酵素欠損症)という疾患と女性不妊症についてお話ししたいと思います。
21-OHDについて
21-OHDは、生まれつき21-水酸化酵素が欠損することで、コレステロールから合成される副腎皮質ステロイドホルモン産生に異常をきたす疾患です(1)。
ホルモンの異常が、卵胞発育や着床に影響し、不妊になると言われています(2)。
21-OHDと不妊症に関連するホルモン動態
- 生命の維持に重要なコルチゾールの産生が低下し、病型によってはアルドステロンの産生も低下する
- 前駆体(原材料)である、プロゲステロン、17-OHPが体内に蓄積し、過剰な副腎皮質でのアンドロゲン(アンドロステンジオンやテストステロンなどの男性ホルモン)産生が生じる
このようなホルモン異常が起きている状況です。
結果として不妊症をきたす女性にどう影響するかといえば、
- コルチゾール・アルドステロン不足:全身の代謝や体液・電解質バランスに影響する
- アンドロゲン上昇:卵胞が発育せず排卵しなくなる(いわゆる排卵障害)(2)
- プロゲステロン上昇:排卵障害にくわえて、慢性的なプロゲステロンの上昇により子宮内膜が着床の時期以外に成熟し着床しにくくなる(いわゆる着床障害)(2)
上記ような影響があると言われています。
21-OHDによる不妊症に対する治療(とくに古典型について)
コルチゾール(ステロイド)を補充し、必要な方にはアルドステロン(フロリネフ®)の補充を行い、17-OHPとテストステロンの血中濃度を適切なレベルまで調整します。
結果として、卵胞期(月経開始から排卵まで)のプロゲステロン濃度を0.6 ng/mL未満に保つことが、妊娠を目指すうえでの管理目標の一つとなります。
適切な内分泌管理を行うことで、21-OHDの女性でも、妊娠を試みた場合に一般集団に近い妊娠率が得られることが報告されています
(1, 3)。
21-OHDの患者さんでは、妊娠を目指すうえで、内分泌疾患の専門医による適切なホルモン管理が非常に重要です。
日頃から患者さん一人ひとりの状態に応じた治療を行ってくださっている専門の先生方には、心より感謝しております。
当院で経験した妊娠の一例
さて、ここまで病態と治療について説明してきましたが、今回、当院で不妊治療を行った21-OHDの患者さんが妊娠され、
妊娠・分娩管理を担う周産期施設へご紹介することができました。
不妊治療に携わる医師として、こういった方の妊娠に関われたことは感慨深いものがあります。
今回の内容は新しい学術的知見を紹介するものではありませんが、
こういった妊娠報告が同じ疾患を抱えながら妊娠を希望されている方にとって、ひとつの参考になればと考えております。
持病があることで不妊症に悩んでいらっしゃる患者様へ
持病や既往があることで、妊娠について不安を感じておられる方もいらっしゃると思います。
疾患があるからといって、妊孕性を一律に判断できるわけではありません。まずはご自身の状態を把握し、必要な治療や管理について相談することが大切です。
当院では、それぞれの患者さんの状況に応じて、妊娠に向けた相談や不妊治療を行っています。
また、医学的に必要な場合は、他院の先生方と密に連絡をとり不妊治療に臨みます。
不妊に関してお悩みがあれば、何なりとお気軽にご相談ください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
伏見IVF乳腺うえだクリニック 院長 上田匡
参考文献
1. Speiser PW, Arlt W, Auchus RJ, Baskin LS, Conway GS, Merke DP, et al. Congenital Adrenal Hyperplasia Due to Steroid 21-Hydroxylase Deficiency: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(11):4043-88.
2. Sarafoglou K, Merke DP, Reisch N, Claahsen-van der Grinten H, Falhammar H, Auchus RJ. Interpretation of Steroid Biomarkers in 21-Hydroxylase Deficiency and Their Use in Disease Management. J Clin Endocrinol Metab. 2023;108(9):2154-75.
3. Casteras A, De Silva P, Rumsby G, Conway GS. Reassessing fecundity in women with classical congenital adrenal hyperplasia (CAH): normal pregnancy rate but reduced fertility rate. Clin Endocrinol (Oxf). 2009;70(6):833-7.
